業務内容
従来,河川堤防や道路盛土などの土構造物は,設計指針類において耐震性能の照査基準が明確に示されていませんでした。それは,土構造物は損傷を受けても修復が比較的容易であることが背景にあるようです。これまでの河川堤防の設計においては,「レベル1地震動」(供用期間中に発生する確率が高い地震動)を対象に地震時のすべり安全率(慣性力を考慮した場合と液状化による間隙水圧を考慮した場合)から堤防天端の沈下量を簡易的に求める方法が用いられてきました。「レベル2地震動」(現在から将来にわたって考えられる最大級の強さを持つ地震動)に対しては,重要度の高い土木構造物に対して設計・検討されることが多いものの,河川堤防などでは適用されなかったように思われます。しかし,「河川構造物の耐震性能照査指針(案)・同解説,平成24年2月,国土交通省水管理・国土保全局治水課」によれば,「耐震性能の照査に用いる地震動としては、原則として、レベル2地震動を考慮すればよい」とあります。既往の堤防の地震被害で大規模な変状が生じた被害は堤防の基礎地盤の液状化に起因するものであり,泥炭上の堤防等では地下水位以深の堤体下部が液状化した事例もあるとされます。また河川以外でも東日本大震災で堤防決壊による被害がため池も発生しました。このように、近年はレベル2地震動について液状化を考慮した土構造物の変形照査が求められるようになっています。
主な解析手法
ニューマーク法
ニューマーク法とは、安全率Fs=1.0となるすべり円 (臨界すべり円) に対して地震波を想定し、すべり土塊の移動量を算出する方法です。具体的には降伏震度以上の地震加速度が作用した場合に、すべり土塊が動くものとして円弧中心の関する角運動方程式を線形加速度法により数値積分します。
ニューマークD法
締固めが不十分なため池堤体などは、地震時に堤体の軟化や液状化による強度低下を起こす可能性があるため、このことを考慮して、ニューマーク法と同様にすべり土塊の滑動量を算出する方法です。
ALID
地盤の液状化に伴って発生する流動現象のメカニズムを、液状化層の土骨格構造破壊に起因する剛性の消失として捉え、自重応力下の砂質土層がせん断剛性低下によって変形すると仮定した静的変形解析手法です。
FLIP
地盤の液状化時における過剰間隙水圧上昇に伴う有効応力の減少、そして土のせん断弾性係数の低下を考慮した動的変形解析手法です。液状化の判定のみならず地震後の構造部材に生じる応力など構造物におよぼす影響について精度良く評価することが可能です。現在、港湾・空港分野はもとより、土木・建築全体にわたる広い分野で耐震性能照査に利用されています。
実績
- 扇川始め2河川堤防耐震対策検討業務委託
- 河内ダム耐震照査調査業務
- 倉橋地区 ため池耐震検討業務
- 南川副地区他農地海岸管理調査委託(堤防耐震点検)
- 鋼管矢板護岸の応力度照査
- 横浜港本牧地区岸壁液状化判定等業務
- 本宿耕地他周辺整備設計業務