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地表傾斜計(感太郎)

斜面等の傾斜変動を捉える斜面崩壊感知センサーです。
「観測王」と組み合わせて、現場の変化(傾斜変動)をいち早く把握し、
斜面災害に対する迅速な情報提供を可能にします。

NETIS登録:平成28年~令和元年 評価促進技術(新技術活用システム検討会議(国土交通省))
 商標登録:第5243857号

平成26年度 公益社団法人地盤工学会技術開発賞
 平成27年度 公益社団法人計測自動制御学会システムインテグレーション部門研究奨励賞
  ※東京大学、(独)土木研究所との共同研究

動画

感太郎・観測王について動画にて説明しています

    
※Youtube版をぞれぞれ公開しております。下記リンクよりご覧いただけます
・感太郎・観測王PR動画
・【3分digest版】感太郎・観測王インタビュー(2021年12月)-展示会Press「建設技術フェア2021in中部」-

概要

自然斜面や人工斜面は、緩みやすべり等を要因として徐々に変動していきます。「感太郎かんたろう」は、この変動を捉えることを目的として開発された傾斜センサーです。不安定岩塊や構造物等といった斜面以外の変動監視にもご利用いただけます。

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センサーモジュールにはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を活用し、無線モジュールには特定小電力無線を採用したことで、小型軽量化、省電力、そして低価格を実現しました。これにより、従来の計測機器と比較して設置の簡素化と多点化が可能になります。双方向遠隔自動監視システム「観測王かんそくおう」と組み合わせれば、斜面災害に対する迅速な情報提供も可能です。

仕様

モジュール仕様
無線モジュール無線適合規格:ARIB STD-T67適合
送受信周波数:429.2500~429.7375MHz
伝送可能距離:約600m(無障害時)
転倒即時検知機能(三軸傾斜計):±30°以上傾斜時(検知範囲:-90°~+90°)
センサーモジュール二軸傾斜計(X・Y)
測定範囲:-30°~+30°
分解能:0.02°

設置方法

斜面地盤

斜面地盤に設置する場合は、L形アングルを地盤に打ち込み、センサーモジュールをL形アングルに固定します。無線モジュールは通信障害を避けるため1~2m程度立ち上げて設置します。

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岩盤や転石、構造物など

センサーモジュールを岩盤や転石、構造物などの埋設できないものに設置する場合は、別途センサーモジュール固定用のプレートをアンカー等で対象物に取り付け、このプレートにセンサーモジュールを固定します。

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計測の概念

地盤の傾斜角を計測する「感太郎」

斜面の変位(地盤変動)により、斜面の地盤は下の図のように傾動します。それに伴って斜面地盤に打ち込んだ杭(L型アングル)と、これに結束した傾斜センサーが傾きます。この傾斜角θを標準10分間隔で計測します。これによって、斜面の変動状況とそのスピードを把握し、危険度を評価します。

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感太郎の成果事例

下のグラフは、切土掘削に伴う斜面の傾斜変化の実例です。傾斜角速度の上昇に着目して変状をいち早く察知し(②)、緊急点検を踏まえた迅速な対応により、押え盛土を施工するこで切土法面の崩壊に至らずに済みました(③)。

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計測事例

感太郎の計測は、法面や斜面での地盤挙動の監視を行い、工事(特に切土工事)作業時や、二次災害発生に備えて斜面下方の保全対象物の安全性を確保することを目的として行っている事例が最近は多くなっています。感太郎はNETIS登録に加えて、評価促進技術に選定されたことを受け、切土工事の施工業者から、「技術提案としての採用」の相談が特に近年増えてきています。

また、法面及び斜面での地盤挙動の計測以外にも、不安定岩塊・土留め壁(H 鋼)・鉄道橋脚など多様な挙動計測を行った実績があります。

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外部評価

感太郎は、以下の評価をいただいています。

  • 平成26年度 公益社団法人地盤工学会 技術開発賞受賞
  • 平成27年度 公益社団法人 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門 研究奨励賞受賞
  • 平成28年   NETIS評価促進技術(新技術活用システム検討会議(国土交通省))選定

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管理基準値に対する考え方

早期警戒における管理基準値設定の必要性

感太郎は「土砂災害警戒避難支援~緊急対応支援~斜面崩壊の前兆現象把握ツール」および「工事の安全支援ツール」としての利用を念頭に置いているため、どの程度の傾斜変動が生じたらどのように対応すべきかを示す「管理基準値」の設定が必要です。

国内で長く広く利用されている地盤伸縮計のような計測機器には、公的な機関が公表している管理基準値や閾値があります。計測値が基準値を超過すると「注意・警戒」のような管理態勢が敷かれ、計測値がさらに上昇して上位の基準値を超過すると、管理態勢も「観測強化」→「避難準備」→「避難」のように強化されます。

感太郎の管理基準値はこれまで、弊社が地盤伸縮計と感太郎を併用して計測を行った際の引用対比実績を基本に設定していました。これは、感太郎の計測実績が少なかったことや、感太郎を含む崩壊感知センサーの公的機関による管理基準値が存在しないことが理由でした。

しかしながら、感太郎の発売以来約6年の間に国内約80サイト500地点海外約20サイト100地点で感太郎による計測を行うなかで、国内の8サイト14地点海外の3サイト10地点において崩壊・不安定化を確認しました。これらのデータを整理し、新たな管理基準値設定の基本となる考え方を以下にまとめました。

傾斜角速度と時間の関係

斜面などの変状が進行する場合、傾斜角度は大きくなりますが、崩壊が近づくにつれて、その速度(傾斜角速度)は加速します。つまり、傾斜角速度が小さいほど比較的安定で、大きくなるほど不安定かつ崩壊が近づいていると言えます。

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下のグラフは、感太郎で観測中だった斜面が崩壊に至った実例です。XY合成値の傾斜角速度が0.083°/hrを記録してから約16.5時間後、0.89°/hrを記録してから約4.5時間後に崩壊しました。

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上記のような崩壊事例や不安定化事例を整理し、ある傾斜角速度を計測してから崩壊または不安定化するまでの時間(残余時間)をサンプリングし、両対数の「傾斜角速度-残余時間」グラフにすると、下のグラフのように幅を持った帯が得られます。

管理基準値に関するデータ及び考え方は、各方面に論文として公開しています(弊社社員による論文一覧はこちら)。これらの成果により、平成26年度地盤工学会「技術開発賞」、平成27年度計測自動制御学会「研究奨励賞」を受賞しました。

この図を基に判断すると、ある傾斜角速度における崩壊までの残余時間は以下のように整理できます。

  • 傾斜角速度0.01°/hr → 残余時間10~300時間
  • 傾斜角速度0.1°/hr → 残余時間1~15時間
  • 傾斜角速度1.0°/hr → 残余時間0.6~5時間

各傾斜角速度での残余時間の幅は、地形・地質・降雨状況の違いを表していると考えられますが、安全側に立って最短で判断すると、傾斜角速度に応じて以下の様な対応が考えられます。

  • 傾斜角速度0.01°/hr → 最小残余時間10時間 → 注意警戒
  • 傾斜角速度0.1°/hr → 最小残余時間1時間 → 避難準備
  • 傾斜角速度1.0°/hr → 最小残余時間36分 → 即避難

監視対象や保安対象によって対応が異なることがありますが、概ね「0.01°/hr」を確認した時点が、早期警戒の「スタートライン」と言えます

管理基準値の運用に対する弊社の考え方

~「感太郎分解能:0.02°」と「早期警戒傾斜角速度:0.01°/hr」の考えの違い~

上述の「0.01°/hr」という値は、早期警戒のスタートラインです。しかしこの値は、崩壊発生後に得られたデータから求めた値であり、感太郎の分解能(0.02°)を超えています。また、実際の観測において変動の明瞭な確認を行うためには、通常0.03~0.05°程度の値が必要です。このため、下記のような変動を観測できれば、0.01°/hrを確認したと言えます。

0.03°/3時間 ~ 0.05°/5時間 (=0.01°/hr)

ただし、このようにして0.01°/hrを確認した場合、早期警戒のスタートラインから少なくとも3~5時間が経過していることになります。スタートラインから最短で10時間後に崩壊する場合を想定すると、この時の残余時間は5~7時間となります。

しかしながら、傾斜角速度が0.01°/hrのまま崩壊に至るパターンは稀で、ほとんどの場合は時間の経過とともに傾斜角速度が上昇していきます。そのため、0.01°/hrの確認後は、「0.05°/hr」=残余時間2時間、「0.1°/hr(0.05°/0.5hr)」=残余時間1時間といった各段階の確認に努めます。感太郎および観測王の監視間隔は標準10分であることから、0.1°/hr(0.05°/0.5hr)の確認は可能です。

以上の例は最短の場合ですが、早期警戒のスタートライン確認後も慌てず冷静に対処することが必要です。

管理基準値の推奨値

以上の考え方を整理し、現在弊社では下表の管理基準値を設定し推奨しています。

警戒レベル傾斜角速度崩壊または再安定化までの残余時間対応備考
警戒レベル31.0°/1時間最短36分即避難いずれのレベルも瞬間的な速度ではなく、明瞭な累積が確認された場合に限る
警戒レベル20.1°/1時間最短1時間避難準備
警戒レベル10.05°/5時間最短5時間注意警戒

計測機器の利点・欠点を考慮した計測機器の選定・配置計画

斜面崩壊に対する早期警戒の監視システムにおいて、ボーリング孔を利用した計測機器(水位計、パイプ歪計、孔内傾斜計…)を設置することもありますが、迅速対応性や経済性で劣ります。また、GPSは大規模地すべりや深層崩壊のような大規模ブロックの監視には向いていますが、通常レベルの斜面崩壊には、精度や経済性で劣ると考えます。弊社では、地盤伸縮計と崩壊感知センサーそれぞれの利点と欠点を理解したうえで、計測機器を選定します。

地盤伸縮計

亀裂を跨いで、その変位を把握します。従って、亀裂が生じやすいブロック冠頭部の計測に向いています。逆に、ブロック末端部では土砂の圧縮移動に伴う傾斜変動が強いので、観測には向きません。さらに、亀裂が不明瞭な場合は、設置位置の選定が難しくなります。また、施工性が低く、且つ建設現場のような他作業が混在している所では、計器設置自体が他作業への障害になることがあります。

崩壊感知センサー

地盤の傾斜変動を把握します。従って、土砂の圧縮移動に伴う傾斜変動が強いブロック末端部での計測に向いています。一方、ブロック冠頭部では平行移動的な変動が強いので、観測には不向きです。また施工性が良く、必要スペースが狭いため、建設現場のような他作業が混在している所でも計器設置による他作業への障害は少なくすみます。

比較項目地盤伸縮計感太郎
設置位置ブロック冠頭部引張運動による平行移動的な変動×
ブロック末端部圧縮運動による傾斜変動×
崩壊ブロックが明瞭でない場合
×
ブロック境界(亀裂)を跨いで設置が基本なので、明瞭でない場合は設置位置の選定が難しい。

明瞭でない場合は、等間隔配置やグリッドシステムで対応する。
施工性設置の安易性×
3人/日で2ヶ所

2人/日で8ヶ所
移設の安易性×
他作業への障害
スペース×
必要スペースが長い(10×1m)ので障害になりやすい

必要スペースが狭い(1×1m)ので障害になりにくい
基地局までの配線×
ケーブル配線となり障害になりやすい。無線利用の場合は無線ユニット装着となり高価。

無線利用で障害回避
管理基準値の有無公的機関×
学協会表彰
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