米国・ワシントン州のオソ地すべり(USGS公開のDEMを使用)
「CIマップ」は「収束度」を使って傾斜方向の変化を可視化する微地形表現図です。
航空レーザ測量などで作成されたDEM(数値標高モデル)を使って,傾斜や起伏を視認しやすくして,遷急線,遷緩線,滑落崖,流水痕などの判読に活用します。
CIマップは特許ではありませんが,ご利用の際は「CIマップ」という名称をお使いいただくことと,
下記の論文を参考文献として明記していただくことをお願いいたします。
上原大二郎,西村修一,田中風羽,竹田和弘:収束度(Convergence Index)を利用する微地形表現図「CI マップ」の考案,
第59回地盤工学研究発表会,23-13-1-06
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CIマップの原理
- CIマップは,収束度(Convergence Index;CI)と傾斜の2つのレイヤを加算合成しています。
- CIは,ある点を中心とする小領域内の,各ピクセルにおける傾斜方向と中心点の方向のなす角θの平均から,90度を除した値を,さらに100/90倍したものとして定義されます。
- CIマップでは,急斜面は濃い赤褐色,緩斜面は淡い褐色に発色します。尾根は赤色,谷は緑色になりますが,急傾斜ほど濃く,鮮明になり,緩傾斜だと淡い色になります。
- 地形が急峻な場合は,マップの色が濃くなりすぎるので,傾斜のレンジの最大値(上の図で「(*)」をつけたパラメータ)を大きくしてください。逆に,平坦な地形ではマップ全体の色が淡くなるので,パラメータを小さくしてください。
QGIS用プラグインのインストールとつかいかた
- QGISの「プラグインの管理とインストール」を起動してください。
- 「設定」タブで,プラグインレポジトリにhttps://www.ckcnet.co.jp/cimap_plugin/plugins.xml を追加してください。
- 「未インストール」タブで,一覧の中から「CI Map Maker 28」または「CI Map Maker 30」を選んでインストールしてください。QGIS 3.28以前は「SAGA」,3.30以降は「SAGA Next Gen」を使います。メニューバーに「CI」のアイコン
が追加されていれば,準備完了です。
「メソッドの呼び出し時にエラーが発生したためプラグインを読み込めませんでした 」というメッセージが出る場合は,一度QGISを終了して,再度起動すると,インストールが完了します。 - お使いのQGISが3.30以降の場合,「SAGA Next Gen」をインストールしてください。
(☞ 手順はこちらをご覧ください)クリックで展開します
QGIS ver.3.30以降では,SAGA(System for Automated Geoscientific Analyses)がデフォルトになっていないため,インストールを実行する必要があります
(ver.3.28以前のQGISでは以下の作業は必要ありません)
Step 1/3:
QGISを起動し,メニュー「プラグイン」から「プラグインの管理とインストール」を実行し,「未インストール」のリストの中から「Processing Saga NextGen Provider」をインストールします。
Step 2/3:
https://sourceforge.net/projects/saga-gis/files/SAGA%20-%209/ にアクセスし,サブフォルダを開いて「saga-9.X.X_x64.zip」をダウンロードしてください。2024年7月現在,9.5.0が最新版となっています。
ダウンロードしたzipを解凍して,できたフォルダをそのままローカルディスクの適当な場所(たとえば,C:\Program Files)に保存してください。
Step 3/3:
QGISで,プロセシングツールボックスのオプションメニューを開き,「プロバイダ」→「SAGANG」→「SAGA folder」と辿って,先ほどダウンロード・保存したSAGAのパスを指定してください。(入力欄をダブルクリックすると,右端に3点リーダが現れ,フォルダを選択することができます)
以上でSAGA NextGenを使用する準備が完了します。
- QGISにDEMを読み込んでください。入出力ファイルのパスやファイル名に日本語を使わないでください
- プラグインを起動して,使用するDEMを選び,CIを計算する半径(ピクセル単位)を入力してください。パワーとバンド幅はデフォルトのまま(2と1)お使いください。CI計算の半径(Radius)は,使用するDEMのメッシュサイズと,抽出したい地形のスケールに合わせて調整します。目安として,5m程度の比較的粗いメッシュの場合は小さめ(2~5ピクセル程度),1m以下の細かいメッシュの場合は大きめ(5~10ピクセル)にします。
- 出力結果をQGISでグループ化するための名前,各レイヤを保存するための名前と出力フォルダを指定してください。
- 「CIマップ作成」ボタンを押すと,計算が始まります。DEMが大きいと計算に時間がかかることがあります。
ライブラリ
FAQ
- Q:CIマップを作成するときのパラメータは,どう決めればよいか
- A:DEMのメッシュサイズと,強調したい地形のサイズによって調整していただくのがベストですが,考案者DUは,メッシュサイズ0.5~1m程度の場合はRadiusを5~10程度,メッシュサイズ5~10m程度の場合はRadiusを2~5程度を目安にしています。
詳しい説明についてはこちらをクリックしてください(下記に展開/表示します)
- 【解説】
CIマッププラグインでは,Radius(ピクセル単位),Power,Bandwidthがパラメータになっていますが,Radius以外はデフォルト設定から変更しないでください。
Radiusは,収束度を計算するときの小領域のサイズで,ピクセル単位で設定します。
下の図は同じDEMを使ったCIマップですが,左はRadiusを2にしたもの,中央は10にしたものです。Radiusが小さいと尾根や谷の中心線近くが赤や緑に発色していて,Radiusを大きくすると幅広く発色しています。同じDEMでも,ズームして詳細な地形を見たいときはRadiusを小さくして,小縮尺で比較的大きな地形を見たいときにはRadiusを大きくしてください。メッシュサイズもRadiusも小さくて,小縮尺にすると,発色が見えなくなってしまうかもしれません。
CIマップのアレンジ技として,収束度(CI)をもう一つ計算して(SAGAの“Convergence Index (Search Radius)”というモジュールを使ってCIのレイヤを作るか,もう一度プラグインでCIマップを作って,CIのレイヤのみを使うこともできます),CI+CI+傾斜の加算合成をすると,大きな地形と小さな地形を同時に表現することもできます(下図右)。このとき,カラーランプは少し暗めの緑,赤を使っています。
CIマップは,お好みと目的に合わせて,アレンジも楽しみながらお使いください!
- Q:「Pythonのエラー」というメッセージが表示されて,計算の進捗を示す数値が途中で止まってしまった。
- Q:出力されたマップが,赤褐色の濃淡だけで,緑色がない。
- A1:入力ファイル(DEM)と出力ファイル(傾斜と収束度)のファイル名や,保存先のパスに日本語が含まれていると,この問題が発生します。
- A2:お使いのQGISがver. 3X.X以降で,「Processing Saga NextGen Provider」がインストールされていない場合にも,この問題が発生します。
詳しい説明についてはこちらをクリックしてください(下記に展開/表示します)
- 【A1の解決方法 その1】
ファイル名,フォルダ名,パスに日本語が入らないようにして,CIマップ作成をやり直してください。 - 【A1の解決方法 その2】
出力ファイル名または出力先のフォルダ名,パスに日本語が入っていると,収束度の計算はされていて,QGISへの表示がされていない状態になっている場合があります。
出力先として指定したフォルダを開き,収束度の計算結果(拡張子はsdat)をQGISにドラッグ・アンド・ドロップしてください。
ただし,カラーランプとレンダリングは手作業で設定する必要があります。また,座標系が設定されていないので,ご注意ください。(傾斜レイヤのprjファイルをコピーして使用することができます)
この方法は,入力データのファイル名やフォルダ名,パスに日本語が入っていた場合には使えません。少し早い段階で止まってしまい,収束度の計算結果が出力されません。 - 【A2の解決方法】
SAGA Next Genのインストール方法は,このページの“QGIS用プラグインのインストールとつかいかた”の4.をご覧ください。 - 【解説】
CIマップは,赤色系と緑色系で尾根や谷を表現するので,赤褐色の濃淡のみというのは,正しい出力結果ではありません。
- 収束度レイヤのカラーランプ,レンダリングを手作業で設定する場合は,下図がデフォルトの設定です。
- Q:出力されたマップの色がおかしい。グレイの上に赤と緑の線が見えるだけ。あるいは何も表示されない。
- A1:SAGAモジュールのバグにより,傾斜レイヤが正しい位置に表示されていないことが原因です。DEMのピクセルサイズが,10のマイナス10乗程度のレベルでX方向とY方向で異なっているときにこの問題が発生します。
詳しい説明についてはこちらをクリックしてください(下記に展開/表示します)
- 【解決方法】
上の図は,DEMを「単バンドグレー」で表示した上にCIマップを表示している例です。背景に何も表示していない場合や白を基調としたマップの上にCIマップを表示している場合に,この問題が起きると,ほとんど何も見えなくなります。
まずは,そのままQGISのプロジェクトを保存して,閉じてください。
CIマップの計算結果を出力したフォルダに,「grd」という拡張子のファイルが2つ(収束度と傾斜)あります。これらをテキストエディタで開いてください。
傾斜のgrdファイルではPOSITION_XMIN,POSITION_YMIN,CELLSIZEの数字が,ゼロまたは1になっていますが,これは正しくありません。収束度のgrdファイルから数字をコピぺして,grdファイルを上書き保存してください。
再度QGISのプロジェクトを開くと,CIマップが正しく表示されます。
- Q:出力されたマップの色がおかしい。全面暗赤色で,わずかに緑の線が見えるだけ。
- A:DEMが地理座標系(緯度・経度)で作成されたものだと,このようになります。
詳しい説明についてはこちらをクリックしてください(下記に展開/表示します)
- 【解決方法】
CIマップを構成する収束度や傾斜は,緯度・経度のデータからは正しく計算することができません。プログラムでは,緯度・経度の1「度」と,距離や高さの1「メートル」を区別することができないためです。
CIマップは,投影座標系(平面直角座標やUTM座標)のDEMを使って作成してください。
CIマップに関するご質問
CIマップに関するご質問は,お問い合わせフォーム(リンク)をご利用ください。