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PROJECT STORY04

SHIRAKAWA

市民との対話で「防災」と「景観」の両立を実現した
熊本市・白川「緑の区間」。

白川 緑の区間
2002年 〜 2007年

2015年には「グッドデザイン賞」を、そして2022年には「都市景観大賞」を受賞した熊本市・白川「緑の区間」。その計画から概略・予備設計までを2002年から手がけたのが中央開発だ。今でこそ住民による水辺でのにぎわいづくりが評価される「緑の区間」だが、当初の改修計画では、緑豊かな河畔林を伐採する予定だったため多くの反発があり計画を見直すことになったという。その後、どのように合意形成が図られ、実現に至ったのか。当時を知る若森と松尾に、現在の設計部メンバー3名が話を聞いた。

PROJECT MEMBER

防災・地域計画部
若森 敦裕
技術士(建設部門)
技術部(地質調査)
松尾 賢太郎
技術士(環境部門、建設部門)
設計部
廣野 綾子
RCCM(河川、砂防及び海岸・海洋)
設計部
経澤 知展
測量士補
設計部
福島 美寿希
測量士補
※内容および社員の所属は、取材当時のものです。
熊本市街を洪水から守れ
74万人が暮らす九州第三の都市・熊本市。その市街地を含む熊本平野を貫いて有明海に注ぐ一級河川が白川だ。上中流域の勾配が急で下流域の勾配がゆるく、かつ有明海の干満の影響で洪水が流れにくいことから、下流域で氾濫しやすいという特徴を持つ。現に戦後だけでも2回の大洪水が発生し、熊本市街にも甚大な被害をもたらしている。

「緑の区間」は、そんな白川水系のなかでも特に治水重要度の高い箇所。1986年に改修計画が発表されたが、当時は環境や景観に配慮された計画ではなかった。「森の都くまもと」の象徴でもある豊かな河畔林が消失することから、住民や各種団体などから多くの意見が出たため計画を見直すことに。そして、白川水系河川整備計画において、樹木を移植して川幅を広げる「防災」と「景観」とを両立させた改修計画を新たに検討することになった。2002年から同計画のプロポーザル(複数社でコンペを行い、最も優れた提案を行った会社に業務を委託する発注方式)において技術提案を担当した若森はこう振り返る。
「それまで国土交通省の計画・設計関連業務の受注実績があまりなかったため、最初に受注したときは嬉しかったことを覚えています。当時は現在の総合評価型とは異なり、会社の規模や実績に関わらず、提案内容とそのアピールが中心だったので、何度も現場へ足を運び、写真を盛り込みながら明確に課題を示して提案書を作成しました。その後、5年間続けてプロポーザルを受注できたのは、毎年の取組みが評価された結果だったと思います。」
若手聞く
Q.
単年契約のコンサルティングと複数年プロジェクトの違いとは?(経澤)
A.
単年契約のコンサルティングは、限られた時間のなかでいかに成果を出すかが求められます。一方で複数年継続受注できた業務の場合は、比較的思い描いた仕事ができるように思います。いずれにしても時間を理由に諦めることなくやりきることが大切です。
移植により再生された河畔林
模型などを活用し丁寧なコミュニケーションを
実際に計画を進めるなかで若森が最も心を砕いたのが「地元住民の方々といかにコミュニケーションを図るか」だったという。土木の知識を持たない一般の方にとって河川改修の話は、専門用語が多く、将来の姿をイメージできないからだ。具体的に、どのように合意形成を図っていったのだろうか。

「沿川住民のほぼ全世帯にアンケートを実施し、委員会や地区別の懇談会というかたちで何十回と話し合いの場を持ちました。机上の話し合いだけではなく、実際にみんなで現場へ足を運んで実物大の堤防の模型を見ていただいたり、樹木を移植した後の成長過程をフォトモンタージュで説明したりと、専門用語がわからなくても実際に目で見て肌で感じていただくことで理解してもらえるよう工夫を凝らしました。」
当時、熊本大学の学生としてプロジェクトに携わっていた技術部の松尾はこう語る。

「当時、私の先生が本地区の検討委員会の委員長を務めていたこともあり、授業や研究と絡めながら緑の区間にまつわる模型などをつくらせていただきました。楽しかったですね。当時、若森さんは学生の私に対しても真剣に向き合ってくれ、しっかり話を聞いてくれた印象があります。さまざまな方の意見を取りまとめるのはタイヘンだったのではないかと想像しますが(笑)私としてはあのプロジェクトをきっかけに中央開発に入社し、やっていることは当時と違いますが、今も楽しく仕事ができています。」

若森が松尾に対してそうしたように、住民とも丁寧な対話を重ねるなかで、少しずつ理解を広げていったという。それにより当初は懐疑的だった方々が一転、心強い協力者になってくれるケースも少なくなかったそうだ。

「例えば、地元の区長さんたちは最初の頃は懐疑的な面もありました。しかし、いつの頃からか懇談会に新たに参加される方々に、自ら熱意を持って事業について説明されるようになったんです。」

地道な活動が確実に実を結んでいると実感できた瞬間だった。
若手聞く
Q.
設計やコンサルタントとして力が伸びたと実感できたのはどんなときですか?(福島)
A.
やはり30代になって自分が主体で仕事が回せるようになってからでしょうか。また、関わる人が多い方が成長を実感できるように思います。普段は役所や会社の数人で行う仕事が多いですが、例えばこのプロジェクトで言えば100~200名の方と関わりました。私は出向も2回経験しましたが、他社の人と仕事をするのも新たな視点を得られるので貴重です。
黒子として地元の方々を主役に
このプロジェクトの印象に残っていることとして若森は、地元の大学や企業と協働で仕事を進められたことを挙げる。

「検討を進めていく中で、施主である国土交通省さんと私たちだけではなく、地元の熊本大学の景観デザイン研究室(旧・施設設計工学研究室)、熊本県造園建設業協会の方々など、それぞれのスペシャリストがお互いの専門性や長所を活かし、足りない部分を補い合いながら進められたことは楽しかったですし、財産にもなっています。」

緑の区間の工事は2015年に完了したが、その後もイベントの開催などを通じて白川の水辺の利活用の活動は継続されているという。令和4年度の都市景観大賞における「景観まちづくり活動・教育部門」の大賞受賞は、それらの活動が評価されたと言える。
プロジェクトが一過性のものではなく息の長いものになっている要因について「大学や企業も巻き込んで地元を主役にしたこと」と若森は語る。

「もちろん、仕事を受注している以上、自分たちの存在感を見せていくことも必要なのですが、特に今回のような地域づくりに関わる仕事の場合、コンサルタントはある意味、黒子に徹する場面も必要なのだろうということをこのプロジェクトを通じて学ぶことができました。特に地域づくり等の場面では、自分たちが関わっていられる期間は限られているので、将来のことも考えつつ「誰を主役にしていくか」を見極めてサポートしていくことも、コンサルタントの重要な役割のような気がします。」

軟弱な地盤に建造物が建たないように、住民の理解や協力が得られない地域では長期プロジェクトは根付かない。目に見えない地盤を改良し整備していくことと同様に、地域の絆を醸成して継続の一助となることも、総合建設コンサルタントの使命なのだ。
若手聞く
Q.
短い時間で合意形成を図る必要がある場合は、どのように信頼を獲得されますか?(廣野)
A.
何よりもまず相手が何を欲しているかを理解することです。それは地元の住民の方に対しても行政の方に対しても同じです。そこを理解して共通の目線で業務を進めることができれば、うまく事が運びます。
大地に、
そして心に残る
仕事をしよう。
中央開発では、働く環境を考え、
一緒に課題に挑める仲間を募集しています。
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