パネルディスカッション

◆パネルディスカッション〜美ら海・美ら島の環境を未来につなぐ〜
コーディネーターの池田先生の司会のもと、大濱石垣市長、石垣市の営農者や八重山青年会議所の地元青年、国・県の担当者・加藤登紀子さんの7名のパネリスト、コーディネーターの惠先生を合わせだ9人で「〜美ら海・美ら島の環境を未来につなぐ〜」と題し、キーワードを「連携」として、各パネリストの自己紹介の後、3テーマで意見交換を行いました。

<コーディネーター>
・池田駿介(東京工業大学)
<パネリスト>
・大濱長照(石垣市長)           ・宮里安一(八重山青年会議所)
・砂川拓也(石垣市在住営農者)      ・木下誠也(沖縄総合事務局)
・安田直人(環境省那覇自然環境事務所)
・山城毅(沖縄県農林水産部営農支援課)
・加藤登紀子(石垣市さんご大使・歌手)
<コメンテーター>
・惠小百合(江戸川大学・社会学部・教授)                  敬称略  

◆テーマ1:海と陸との連携

環境省では海域の取組みとして、昨年5月に石西礁湖自然再生協議会にて、石西礁湖のサンゴ礁生態系を再生するための全体構想を取りまとめています。また、赤土対策など陸域で行う対策については、環境省では対策を行うツールを持っていないため、陸域対策については連携無しにできないと考えられています。
沖縄総合事務局では陸域の取組みとして、土砂の移動を山・川・海で見ていこうと考えられています。例えば、上流ではNPOの協力を得て、山腹に植栽を増やし、堆積した砂防ダムから土砂が流れるようにバイパストンネルを整備して、適正な土砂を下流に流す考えです。そして、水をせき止めると魚が移動できないので、下流では魚道を造るなど、山・川・海が連携して行える取り組みを考えられています。
これらの取り組みを受け、コメンテーターの江戸川大学惠氏から、水に親しんで考えるために、人間も指標の一つとするべきと提言されました。例えば、関東地方を流れる荒川では、「あなたの家も水源地運動」として、私たち自身が水源地の認識を持ち、家庭排水や事業系廃水を綺麗な水質で流すことで、下流域にとっての水源となると提言しています。

◆テーマ2:産業・経済と環境との連携
石垣市長の大濱氏からは、石垣市は観光立市宣言の制定を行っており、観光と環境を結びつけるたけてなく、観光と他の産業を結び付ける必要があり、地産地消の推進が必要であると提言されました。
沖縄県農林水産部営農支援課の山城氏からは、沖縄県赤土等流出防止条例後の対策状況が説明され、対策は農家のみでは解決できないため、行政を含む地域が一体で取組む必要があり、地域に合った総合的な対策が必要と考えられています。
さらに、石垣市さんご大使・歌手の加藤氏からは、安谷屋先生の提案である「エネルギー自給のためのリサイクルの仕組みを作る」ことは、すばらしいと思うと述べられ、ゴミを資源として利用する転換点にいることを認識し、海の富栄養化を引き起こすものを外に捨てないで再利用するべきと提言されました。

◆テーマ3:世代や立場を超えた人の連携

石垣市在住の営農者の砂川氏からは、世代や立場を超えた人と連携方法の実体験が述べられました。高校を卒業して、石垣島から島外に移った子どもに対しては、農作物を送る際にコミュニティ冊子や新聞などを入れ、ふるさとの情報を提供することで、悩んだ時に心の支えになるとのことです。また、島外の人に対してインターンシップで自身の農家へ受け入れる取組みを行っており、終了後も電子メールや携帯電話を用いて連絡をとりあうことで、今後石垣島に訪れた際に連携することが可能となると述べられました。
八重山青年会議所の宮里氏からは、何故島外から来て、サンゴ礁保全や赤土流出の研究を行っているのかが疑問であったが、サンゴの源流が石垣島周辺にあると考えれば、「地球人」として広い意味でサンゴ礁の問題を考えるべきであると述べられました。

 

パネルディスカッションの最後にコーディネーターの東京工大学池田氏から、以下の提言がまとめられ、大盛況で終わりました。


サンゴ島フォーラム「うみ とぅ ぬ一」の提言

■提言1.サンゴ礁に代表される自然の価値の再確認
・自然か持つ価値を再認識し、共存することで得られる恩恵を最大限引き出す
・「開発=自然破壊」の歴史を追従しない
・滞在型、地域環境の発信型(サンゴの実態をあえて見せる)エコツーリズムの展開
■提言2.島の発展の両輪となる人材と環境と調和する産業の育成
・小中学生への教育、民間への啓発、NPOや専門家の育成(例、環境再生医)
・人材育成と産業の育成は両輪
■提言3.連携によって切り拓く
・海と陸の連携、各省庁・自治体との連携、各産業間の連携、基金制度:本土と島(黒潮流域の上下流)の連携、施設(ハードとソフト、おばーの知恵活かせ)
■提言4.目標は自然共生型流域圏の構築(環境と経済の両立)
・地球環境問題解決の原点、科学・技術に基づく政策を展開する
・石垣島(熱帯地域)の特性を活かし、石垣島ならではの取り組みを展開する(カボチャなど)
■提言5.継続的な取り組みへの足がかり
・研究活動は区切りを迎えるが、これはキックオフであり、始まりである。事態は緊急性を要していることから、共存した課題の解決を鋭意に進めたうえで、進捗を定期的に確認する場の設定を提案したい。