物理探査 その3

◆高密度表面波探査法 −地下浅部の状態をイメージングする− TK-005

【表 面 波】

 表面波は弾性波の一種で媒質の表面付近に沿って伝わる。
  表面波にはレイリー波とラブ波が存在し、その伝播速度は伝わる媒質のS波速度構造と強い関係を有す。
  すなわち、深度方向にS波速度構造が変化する場合、表面波の伝播速度は周波数に依存する速度分散性が生じる。
   レイリー波では図−1に示すよう、波動のエネルギーは殆ど媒質の表面から1波長以内の深度範囲に分布することから、
 レイリー波は周波数が低いほど波長が長く、表面からより深いところの物性の影響を受けることになる。
  これは速度分散の原因である。

 

レイリー波の深度方向における振幅分布

図−1 レイリー波の深度方向における振幅分布(右図:宇津徳治、地震学、P55による)

 表面波の分散特性(周波数ごとの伝播速度、位相速度と言う)を調べれば、
  逆解析により地下のS波速度構造モデルを求めることができるが、この原理を利用する探査手法は
  表面波(レイリー波)探査と微動アレイ探査がある。
   なお、表面波としてのレイリー波には水平成分と垂直成分を有しているが、
  ラブ波は水平成分のみあり垂直成分受振器を使えば、レイリー波のみ受信することができる。

【高密度表面波(レイリー波)探査】
   高密度レイリー波探査は地表において人工震源により表面波を発生させ、
  複数の受振器 (例えば12〜24個)で同時に記録し、位相速度解析によりレイリー波の位相速度を求めたのち、
  速度構造解析により位相速度からS波速度構造を求める探査手法である。
  図2 に示すのはレイリー波探査のイメージ及び、地表を叩く時の垂直成分受振器により記録される主な波の例であるが、
  レイリー波は振幅が大きく伝播速度が低い特徴を有する。
  位相速度解析はこのレイリー波を抽出し、図−4に示すような位相速度曲線を求める。
  そしてに速度構造解析により図5に示すようにS波速度構造を求める。

【特 徴】
  @ システムが非常にポータブルで、山岳地域・斜面上でも簡単に実施出来る。
  A 人工震源及び多チャンネルを利用することにより高精度にレイリー波の位相速度を求めることが出来る。
  B 多チャンネルを利用することにより効率よく高密度的な位相速度情報を取得することが出来る。
   (一回の発振で測線を沿って数箇所の位相速度情報を取得することが可能)
  C 必要に応じて、1次元探査(点的な情報)、2次元探査(レイリー波速度断面、S波速度断面)
   及び3次元探査(3次元的なレイリー波速度分布、3次元的なS波速度構造)等利用法がある。
   例えば、測線沿いの1m間隔の位相速度情報を取得すれば、
   多地点同時逆解析技術により測線沿いの準2次元的なS波速度構造が得られる(図7)。
  D 人工震源を利用するので、強力的な震源を利用しない限り、地表付近の情報しか得られないので、
    通常場合(ハンマを用いる)の探査深度は10数メータル以内である。

【数値シミュレーション】
   手法の有効性を示すために図6のモデルについてのシミュレーションの結果を図−7と図−8に示す。
  図−7はシミュレーションのデータから多地点同時逆解析により得られたS波速度断面で、
  高い精度で図6に示すモデルを再現できている。
  また、図−8は位相速度から作成したレイリー波擬似断面で、図−6に示すモデルとの相似性を示している。

シミュレーションに用いたS波速度構造モデル

図−6 シミュレーションに用いたS波速度構造モデル

逆解析により得られたS波速度断面

図−7 逆解析により得られたS波速度断面

得られたレイリー波速度擬似断面

図−8 得られたレイリー波速度擬似断面

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