物理探査 その2◆微動アレイ探査
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名 称 | 形 式 | 仕 様 | 数 量 |
地震計 | UPS-SPAC | 速度型上下動 (1成分)固有周期:7秒最高感度:2500V/(cm/s)電源:DC 12V(乗用車用バッテリ) |
7式 |
記録器 | LS8000SH | 分解能:16ビットGPS時間校正精度:±5μs内部時計精度:±1 ppm電源:DC 6〜9V (乾電池) |
7式 |
7台の測定システム間のコヒレンス:0.999以上
7台の測定システム間の位相差:±3°以内
【微動アレイ探査の特徴】
@ 人工震源を必要としなく、人間活動が密集するノイズが大きい都市部でも適用できる。
A 測定システム及び観測自身が比較的簡便であり、手軽にS波速度構造が得られる。
B 深度数10mの浅い構造から数1000mの大深度S波速度構造まで対応できる。
C 自然地震波と同じ周波数範囲の波を利用するので、得られたS波速度構造は強震動解析に相応しい。
D 海域のS波速度構造調査への適用も可能である。
E 目的に応じて1次元探査、2次元探査及び3次元探査ができる。
【測定及び解析技術】
微動アレイ探査にはアレイ観測、位相速度解析と速度構造解析の3つの過程があるが、
当社では、これに応じた種々の測定、解析技術を開発・構築している。
@ アレイ設計技術:調査地域の既存情報と現場状況に基づいて探査目的を達するためのアレイサイズ、
形状、地震計設置場所、観測時間帯及び観測時間長を決定する技術。
主要技術:感度解析によるアレイ設計
A アレイ観測及び品質管理技術:計測システムの構築及びデータ品質管理技術。
主要技術:Microtremor品質管理Package
B 位相速度解析技術:解析に用いるデータの評価技術、デジタルフィルター技術及び表面波位相速度を求める技術。
主要技術:波数−波数法(F-K法):Beam Forming F-K、Maximum Likelihood F-K
空間自己相関法(SPAC法):FFT-SPAC、AR-SPAC
C S波速度構造解析技術:逆解析により位相速度からS波速度構造モデルを求める技術。
主要技術:遺伝的アルゴリズムによる速度構造解析(一次元探査)
多地点同時逆解析技術(擬似2次元、擬似3次元探査)
D モデル評価解釈技術:調査結果の総合的解釈と評価。
主要技術:等価層解析技術
【主な実績】
年 度 | 発注者 | 業務名称(略称) | 業務規模 |
H10、11、12 | 横浜市 | 横浜市地下構造調査における微動アレイ探査 | 16地点 |
H11、12 | (株)地球科学総合研究所 | 川崎市地下構造調査における微動アレイ探査 | 4地点 |
H12 | 濃尾平野地下構造調査における微動アレイ探査 | 12地点 | |
H11、12 | (株)阪神コンサルタンツ | 京都盆地地下構造調査における微動アレイ探査 | 5地点 |
H12 | 日本原子力研究所 | S波速度構造の調査 | 1地点 |
H10、11、12 | 東工大、名古屋大、岩手大との共同研究及び社内研究 | 10地点 |
微動アレイ探査を強震動予測のための大深度地下構造調査に用いた応用例である。
観測は最大底辺長1.5kmの2重同心三角形アレイを採用した。
図5に示すように、得られたS波速度構造はアレイ中心に位置するボーリング柱状図および
PS検層の結果と良い整合性が得られている。
図 4 アレイ展開及び地震計設置例
図 5 微動アレイ探査の結果
(左図:観測位相速度及び得られたモデルのレイリー波位相速度 右図:逆解析により得られた地下構造モデル)
A 土木分野への応用例
本応用例は微動アレイ探査の速度検出精度及び、
埋没谷等不整形地盤への適用性を検討したものである。
図 6 に示すように、微動アレイ探査はPS検層と比べて、
垂直方向の分解能がやや低下するものの、十分なる層厚であれば
PS検層と同程度の精度でS波速度構造を求めることができる。
図 7 は微動アレイ探査を埋没谷調査への応用結果であるが、
調査地の地質は基盤より以浅は埋土、粘性土・砂質土で、
基盤は第3紀の泥岩で構成されている。
観測は、埋没谷の斜面の真上に埋没谷を横切るような測線を設け、
5地点の探査を行った。
図示のように、探査結果は基盤が顕著に傾斜する地点において
得られた基盤の深度の誤差が多少大きくなるものの、
全体として埋没谷の形状、基盤とその以浅の
S波速度構造を把握することが出来た。
図−7 微動アレイ探査による埋没谷の探査結果とボーリング結果の比較
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(2007/5/8) 第46回物理探査学会において、平成17年度物理探査学会賞を受賞しました。内容は以下の通りです。
・受賞者 : 馮少孔・杉山長志,山中浩明 (東京工業大学)
・対象論文:
一番目の論文は微動アレイ探査による堆積平野の準3次元的な地下構造を求めるために,従来1地点ごとに解析していたものを複数地点のデータを連結して解析する新技術です。
2番目の論文は表面波探査の解析精度を向上する技術で,地下構造解析に用いる位相速度曲線を従来の基本モードだけの解析からマルチモードの位相速度曲線も適用できるように拡張した新技術で,微動アレイ探査にも高密度表面波探査にも適用可能な技術です。
平成11年から大深度地下構造調査業務を通じて微動アレイ探査技術を開発してきており、発注者からの信頼を得ており、さらに今回の受賞は学術的にも評価された結果と思われます。
この受賞は、東京工業大学を始め多くの大学の先生方からの適切なご指導、並びに我が社の技術開発方針に裏打ちされた開発者の努力によるもと感じています。今後は、この成果を生かして社会資本整備に役立てて行きたいと存じます。
(文責:馮 少孔・杉山長志)
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